ねぇ、顔を見せてよ
「え?こーいうとこなの?」

「ダメだった?」

マリアは手入れされた手に凸凹した飾りがついたネイルを唇に当てて

「バルって安っぽくない?」

と不満げだ

連れていったのはそこそこ流行りのスペインバル
女の子ウケもなかなか良いハズだったのだが…

「そう?結構ウマイんだけどな」

ちょっと苦笑いしながら入店を促すとマリアは渋々ついてきた

しかし…

「えー、シャンパンないのー?ウソー」

「やだぁー、マリアねぇお肉もエビもキライー」


座って注文する度に文句の嵐…

極めつけは

「伏見くん、企画部の岩波さんと仲良いんでしょ?ね、紹介して、お願いぃ」

オレには興味がなかったらしい

(まぁ、顔だけの女の子なんて…そこら中に居るからな)

これでも営業部の成績もエースクラスだし、甘い顔と声で誘えばついてくる女の子も多い

だから次は誰にしようかなんて考えているところだ

(次、次に行こー!)

「おーい伏見!三番にA企画さんから電話」

「はい、今出ます!」

その時は山多のことなんてすっぽり抜けて仕事に戻った

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