ねぇ、顔を見せてよ
「伏見くん!有り難う!」

「あ、うん…」

山多はオレの手をブンブン振って顔を緩ませた
その様子を見て河野くんは頭をポリポリとしながらも嬉しそうに笑って

「とりあえず中に入れよ二人とも」

「あぁ…行くぞ、山多」

「はい。」

山多は眼鏡をしないまま、スタスタとしっかりした足取りで建物に入っていった

(なんだ?見えてんのか?)

「とりあえずそこ座って…車じゃねーし、フッシーはビールでいいよな?」

「うん!山多は?」

何となく

「はい!ビールなら得意分野です!」

キツネにつままれたような気分で山多を見ていると
ニコニコとした
山多と目が合う…そしてハタと気付いたらしい

「はっ!眼鏡!ヤバイ」

慌てて前髪をぐしゃぐしゃにして前に下ろそうとしたのでオレはその手を止めた

「もう、隠しても無駄…ってか、なんでそんな隠してんの?」

「き…気持ち悪くないですか?」

「何が」

「見ましたよね…目の色…」

「ああ。なんで気持ち悪いんだよ」

(びっくりするくらい…綺麗なのに)

「だって、私…目の色がみんなと違って濁ってるから…昔、魔女みたいって言われて…」

どうやらそれを気にして隠していたらしい

「濁ってるんじゃなくて
ハーフとか?クォーターなんじゃないの?その色…」

「曾祖母がロシア人らしくて…クォーターより先なんで、ミックスとでも言いますか…でも兄弟で私だけなんです…こんな色」

「遺伝はホラ、何代か先にも出るでしょうよ」

(綺麗なブルーグレーだよ)

「だとしても…伏見くんみたいに綺麗な茶色が良かったです蜂蜜みたいで美味しそう…あ、いや、その…」

山多は髪の毛で顔を隠すのを諦めたのか、頭のてっぺんにちょんっとピンで留めた

「…山多のそれ、綺麗な色だよ?」

「あ、有り難う」

「おいらもそう思うぞ。
滅多に見ないブルーグレーだし、良い色だ」

戻ってきた河野くんがふにゃりと笑うと、山多は恥ずかしそうに微笑んだ

(…んだよ、可愛いじゃんかよ…暗幕のハムスターのくせに)

「あ、河野くん…この子、あの青い羽根の2色ペン持ってて…」

「え?あの初期作品?」

「はい…」

山多が差し出したのは青い羽根の2色ペン

「うわ懐かしい…嬉しいなぁ…なんか」

河野くんは心底嬉しそうに呟いた

「私の目もこれくらい綺麗な色…空たいな青なら良いのにって最初手に取ったんです…澄んだ空みたいにとても綺麗で!」

キラキラした目で話す山多は…なんだか真っ直ぐで

変なヤツなのに…目が離せない
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