ねぇ、顔を見せてよ
すると山多はオレを見て、それから河野くんを見た

「そう言えば…河野さんが作ったんですか?この、伏見くんの眼鏡…」

「あーうん。フレーム作ったなぁ…友だちのよしみでね?
世界にコレ1個しかないんだぜ?」

山多はズザッと音を立て立ち上がると、オレに向かって勢いよく、かつ深々と頭を下げた

「伏見くん!!ごめんなさい
本当の事教えてくれたのに疑って!!
…私、卑屈ですよね…騙すなんて疑って…本当にごめんなさい」

「いいよ」

「でも…」

「そんだけ初期からのイイモノ堂のファンなら…見たこと無い商品を語ったら嘘だと思うだろ?説明不足だったオレのせいもあるし」


(正確には言わないうちにこいつが騒ぎだしたんだけど、
真っ直ぐに謝ってるコイツに悪気はないだろうし…まぁいいや)

「なんかよくわかんないけど?…で、眼鏡がどーかした?」

河野くんはビールをぐびぐび飲みながらエヘヘと笑う

「私、この伏見くんのこの眼鏡が大好きで!
同じのが欲しかったんです」

「ほー、なんで?コレ?」

(そりゃあ…気付かなかったとは言え、河野さんデザインのファンだからだろ?)

「それは私が伏見くんが好きだからです!!」

「はぁー???」

オレはズッコケてしまった

(なんだ、それ…)

「だから同じの欲しくて…聞きました」

「へー…だってよ?フッシー」

(河野くん、悪い顔してんなぁ)

「あのさぁ山多…「あぁぁぁ!」

オレが山多に話そうとしたら山多がまた叫ぶ

「なんだよ」

「私、伏見くんの前で…好きとか…」

「言ったね、言いましたな? お前しっかり、ハッキリ、それはデッカイ声で…」

「わ、わ、忘れてください…もう忘れてー!」

真っ赤になって首をブルブル、腕もぶんぶん振る山多は

(あー、やべ…可愛いな)

「やだね」

わざとそっぽを向いてやると山多は泣きそうになりながらこちらを見上げた

「伏見くん、意地悪です…」

「な…」

告白されて(告白かどうか怪しいけど)忘れてとか、忘れないなら意地悪とか

「意味わかんねぇ…」

オレが呟くと同時に河野くんが山多を手招きした

「紅子ちゃんおいで!いいの見せちゃる!」

「本当ですか?やったー!!」

すでにオレの呟きなんて聞いちゃいない山多

(んっだよ!)

その後、どうやら河野くんは山多がかなり気に入ったようで

「じゃあ紅子ちゃんにも眼鏡作ってやるよ!」

なんて約束していた
それを嬉しそうに笑って頷く山多…
すっかり意気投合してるしのを見て

(…面白くない…)

そう思った…

「ん?」

なんで、オレはイライラしてるんだ?
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