ねぇ、顔を見せてよ
数日後、康太に飲みに誘われたけれど

「いや、今日は彼女とデートだからダメー」

と断りながら支度していると

「うそー?!伏見彼女出来たの?誰?ねー社内?可愛いの?」

と、じゃれついてきた
長い手足でホールドされたら動けないから何となく悔しい…


「ん?社内だよ…しかも可愛いよーメチャクチャ…あ、来た」

「伏見くん!お待たせしました!帰りましょ?」

山多じゃなくて、手を振りながら紅子がフロアに入ってきた

「紅子お疲れ様、行くか…じゃあな康太!」

オレは紅子の肩を抱いて鞄を持つ指で康太に手を振った

「え?誰?このカワイコちゃん…どこの部署?」

「橋田くんこんばんは…私?経理部ですよ?同期なの…ご存知ですよね?」

「え?経理の同期…」

康太は本気で分からないらしい

ま、だろうな…変わりすぎて分からないだろう

「私、山多紅子です…」

「ええ?えー!あの暗幕ちゃん??こんな美女だったの?」

「そーいうこと!じゃあな」

オレは康太にウィンクを残して、紅子の手をギュッと握り…会社から外へ出る

外に出るとすぐに紅子が不思議そうにブツブツ言っていた

「あのぉ伏見くん、暗幕ちゃんって私?」

不満そうだ…

(そう呼ばれてた事に気づいてなかったんだな…)

「気にすんなよ…もう暗幕無くしたんだから」

紅子のサイドに流した前髪に触れ、綺麗な色の瞳を覗きこむ

「ちょ…伏見くん?なんですか?」

「いや、可愛いなって…「あぁぁぁ!」

「な、何だよ」

「今日も伏見くん…格好いいです、好きです!」

そういうと紅子はオレの指に自分の指を絡めて笑った

「コレ、この間の花の意味です!」

「あ、そ…」

ニコニコと笑った笑顔がホントに可愛くて
すぐに抱き締めたくなる

なんだかズレてる、こんな子が可愛くて仕方ない

オレがおかしいのか?

幸せなら
…ま、いっか。


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