ねぇ、顔を見せてよ
憧れのヒト 紅子side
(はぁぁ…カッコいい…)

今日もチラリと見かけたあのヒトは
綺麗なサラサラの黒髪に綺麗な薄い茶色の瞳
手足がスラリとして、脚が長いからか、そこまで高くない背なのにスタイルはとても良かった

笑うと仔犬みたいに可愛い笑顔で
センスのよいスーツをいつもさりげなく着こなしているし

太いウェリントンの黒縁の眼鏡は光の加減で色が変わる
ちょっと変わったデザインで、彼のお洒落さを引き立てている

営業部のエースと名高い同期の伏見巧くん

憧れのヒトだ

姿を見たくて用もないのに営業部まで伝票を届けにいったり
(そうすると大抵違う仕事を頼まれてきてしまうのだが)

社食で遠くから眺めるために、大体の伏見くんのランチタイムを覚えて毎日行ってみたり……

(お弁当より高くついて2ヶ月続けられなかったけど)

伏見くんに話しかけたくても
男性にも歳上にも可愛がられる彼の周りには
いつもキラキラした人や綺麗な女の子たちが取り巻いていて

地味な私なんかが近付けるヒトではなかった

それが!
勇気を出して眼鏡について話しかけてから
お近づきになれて……

「紅子ー、帰れそう?」

「あ、はい!あとここを片付けたら出られます」

「分かった…じゃあ、ここで待つ…もう帰ったんだよね?お隣」

可愛らしい笑顔で私の頭をポンポンと撫でると
隣の席にトンっと座りこんだ

「え、あ、うん…」

「紅子は頑張り屋だなぁ…無理しないでよ?」

「有り難う」

…今は彼氏になったんです…


前から優しい人だとは思っていたけれど
伏見くんは想像以上に優しいし甘くて
いーっつも私を甘やかしてくれるから

私はでろんでろんに溶かされてしまう


それに、二人きりだとものすごく
甘えん坊でもあるのを付き合い始めて知った


「紅子の作ったご飯早く食べたいなぁ、約束通り…明日は泊まりにおいで?」

「うん…」

金曜日から泊まりね!

と、付き合い始めてからすぐにリクエストされていて

既に7回程の週末を彼の部屋で過ごしている

付き合い始めて2ヶ月…

実はまだ、その…私たちはイタしていなくて…

最近、私は悩みのたねなのだ






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