愛すべき、藤井。
「鈍ちん」
気づけば藤井の家へと曲がる交差点。
私の家はこの交差点を直進だから、藤井とはここでお別れだ。
藤井と立花くんのやり取りを聞いていたせいか、何だかあっという間だったなぁ。
なんて思いながら足を止めれば、それに気づいた藤井が足を止めて、
「ばーか、送ってくに決まってんだろ」
ベッと私に舌を出す。
「っ!」
「何?藤井、家あっち?いいんだぜ?帰ってくれても全然。むしろもう帰れ」
そんな私たちのやり取りに気付いた立花くんが、私を軽く自分へ引き寄せながら、藤井に悪態をつく。
「っ、お前みたいなチャラ男と2人に出来るか!」
「ふぅん?ま、いいけど〜。俺と夏乃のラブラブっぷりに泣くなよ藤井〜」
「……泣かねぇよ」
ガチャン、と音を立ててチャリのスタンドを下ろした藤井が、その場にチャリを残して私へと歩み寄る。
「いつまで抱かれてんだよ、バカ夏乃」
───グイッ
「さっさと歩け」
「わ……」
立花くんの腕に引き寄せられたままだった私の手を引っ張って、早く歩けと急かす藤井は、何だかいつもの藤井じゃなくてドキドキする。