愛すべき、藤井。

……なんだよ、藤井のバカ。



藤井の手はすぐに離れたのに、私の手には藤井の体温が残ったまま。


チャラ男代表立花くんとの帰り道を心配してくれるのは嬉しいけど、藤井ってこんな過保護だったっけ?


再びガチャンとスタンドを上げた藤井はチャリをおし始める。


「藤井くーん?人のもんに手ぇ出さないでくださーい」

「手ぇ出してねぇし。つか、立花のもんじゃねぇだろうが!!」

「それを言うなら藤井のもんでもねぇだろ」


また始まってしまった。
少し遅れて歩いてくる立花くんが、にこやかな顔で藤井に喧嘩を売っている。


もう家はすぐそこに見えてるってのに、私が家に入ってからも続くんじゃないの?これ。大丈夫?


「つーか、お前が被害にあってるストーカーって実在すんのかよ」

「モテないからって僻むなよ」

「っくぅ〜〜〜!!お前、本当に腹立つな」

「光栄だな」


フッと笑う立花くんは楽しげで、対する藤井はムッとふくれっ面。


「なんか兄弟喧嘩みたい」


そんな2人がおかしくて、私は思いっきり吹き出した。もちろん、藤井が弟。

出来の良い兄を持った、哀れなる弟って感じ。



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