愛すべき、藤井。
そんな2人に私は片手を上げて、
「じゃあ、2人とも送ってくれてありがとう!」
いつにも増して素直にお礼を伝えて微笑んだ。これと言って何も考えずに、スゥっと出てきた言葉と笑顔。
そんな私に、
「俺が送ってやった後はそんな顔しねぇくせに」
ボソッと藤井がなにか呟いたけれど、小さすぎて上手く聞き取れなかった。
「藤井なんて言ったの?」
「……何でもねぇよ」
最近の藤井はそればっかり。
『何でもない』とか『別に』とか、はぐらかしてばっかり。気になるんだから、藤井が思ってるよりもずっと、藤井の行動や言動……一つ一つに私は自分でも驚くくらいに左右される。
藤井に言わせりゃ、知らねぇよって話だろうけど。
「夏乃、」
「……ん?」
そんな脳内藤井1色だった私を立花くんが呼ぶから、慌てて立花くんへ視線を向けようとした私は
───グイッ
「っ!?」
チュッと短いリップ音を立てて、私のおでこに柔らかい何かが触れて目を見開く。