七瀬クンとの恋愛事情



「飲み過ぎてんなぁ倫ちゃん、タクシーで送っていくから」

脇谷くんは甲斐甲斐しく奥様が車で迎えに来て
高科課長は少しフラつく私と一緒にタクシーに乗り込んだ


私のマンションより自宅は近いはずなのに、わざわざうちの方まで先に回ってくれるらしい


「すぃませぇん、」

自分でも少し飲み過ぎたのがわかる


………瞼が重い

「寝てればいいよ、後で着いたら起こすから」

そう言われてつい、重力に従うように身体をタクシーのシートに沈めた

課長は今日はいつもより飲んでなかったみたいだ



………あぁ、そういえば携帯みてないや

七瀬くん、どうしたかなぁ

きっともう自宅に帰ってるよね、だって
うちに来る理由なんかないもん

きっとあれから古坂さんとキスのその先へ
そして気付いてしまうんだ、『やっぱり主食に戻ろう』なんてね。



ポァンッとする頭の中で、せっかく忘れていたシーンが目を閉じているのに見えてくる

容赦なくチクチクと痛む胸に加えて、
ノドの奥に何かが引っかかって上手く息が出来ない


「倫ちゃん、大丈夫?」

涙が出そうで、それをグッと堪えるように眉間を寄せると、そんな私を覗き込む高科課長

酔いで頭がふわふわとする中で、つい喉に溜まるような塊を吐き出したくなった


「なんか、心が痛い……」

「うん?」

目頭は重いまま瞼にかかる重力を少し押し上げる

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