七瀬クンとの恋愛事情

「………ん、や」

酔っていて力がなかったその手で、ようやく課長の腕を掴み微かに押し上げた

「ゴホッんっ……」

いきなり運転手さんがワザとらしく咳払いをしたため、その声に一瞬でビクッと肩が上がる


途端にキスの感触が離れていって、眉を歪ませ目を見開いた私の目が課長と合った






………うわぁっ!!

私も恥ずかしさで瞬時に顔を伏せた

ギュッと硬く閉じた目のまま、この状態をどう切り抜ければいいか考えるが

心臓は壊れそうなくらい騒ぎ立てて仕方ないし、この状況を理解出来なくて身体が固まってしまったみたいだ


なっ、なななっ、何が起きた?!

今………私、された?



これ以上この妙な胸騒ぎのままで、いられない


「あっ、の……すみま、せんっ」

肩を抱かれた状態から思い切り抜け出すように押し出して


視線を合わせないで髪を搔きあげ、背中から課長と距離をとった

密着していた身体から鞄一つ入るくらいのスペースを空けて座り直し、窓の外に視線を向けた



暫く沈黙が続いて、次に課長が口を開いた

「倫ちゃん、ヨダレ、ふいた?」


「へっ………? うそっ!?」

私もしかして、
そんなみっともない顔してた?!


「嘘」


「はぁっ?!」

俯いていた顔を課長へ向けた


「クックックッ………ごめん」

反対側の車窓に身体を向けて、その背中が小刻みに揺れる

いつもの課長だ………

ヨダレの確認に唇を拭うと、つい今さっきの感触を思い出した

………でも、キスされた


『俺は結構高科課長って本気だと思うぜ、
松原の事好きだろ?ずっと言ってんじゃん』

さっき脇谷くんのそう言っていた言葉が一瞬頭をよぎっていった




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