七瀬クンとの恋愛事情

右手親指の付け根から袖口に微かに残るピンク色の染みは、たぶん唇を染めた古坂さんの口紅を拭ったもの

大概飲み会がお開きになる前に、彼女は化粧直しする

前に言ってた事がある、いつもより濃いピンクの口紅が自分の勝負用の口紅の色だと


その口紅をつけた彼女とのキスを、後から拭った跡だろう………


組み敷かれたその状態のまま、カッと頭の血液が熱くまるで煮えたぎるような感覚と、訳の分からない息苦しさを感じる


同じように手を彼の頰に伸ばし、その唇を親指で撫でるようになぞる

きっと、
彼女もこの唇に触れて、舞い上がるほど気持ちが良かっただろう

思わずゴシゴシと強く拭うようにその唇に触る


「ん………倫子さん?」

そのままジッと見つめると、頰を両手で掴んで引き寄せ、噛み付くように彼の口を塞いだ

舌を絡ませお互いの唇を濡らし、まるで何かに対抗するかの様に長く深いキスを



「っつぅ………!」


咄嗟に彼が口を離し、痛みの走った傷を手で覆うと、
微かにその傷に血が滲んでいた

「あ………ごめっ」


彼の唇に傷をつけた私

傷ついた唇の血を指で確かめながら、舌でまだ滲むのを舐めとっている


「ダメ、ばい菌が入るから」

「後でいいよ」


中断して手当てしようと身体を起こそうとするのを、また引き戻される

気にしない様子で再開される彼の上がる指先の感触に、ビクッと肩を捩らせ目を瞑ると一瞬一筋の熱い感覚が顔を伝った


「倫子さん?」

いつの間にか私の両手は彼の胸を押し上げていて
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