七瀬クンとの恋愛事情


「ご心配なく、その辺は抜かりないから。あいつもこっちの大学に受かって一緒に上京するから」


待て待て待て待て、話がよめない
チェリーボーイに恋人がいるのか?だったらわざわざ筆下ろしを頼まなくたっていいだろう?


「珍しく杏奈ちゃんとは長いよね。相当遊んでた徹也の手綱を上手く引いてて」

おいおい、話が違うだろ。真面目でいい子はどこいった?
こいつ、本当にチェリーなのか?

「ったく、父さんも本当に徹也には甘いんだから」

父親に育ててもらってる引け目はどうしたっ!
黙って聞いてる俺には、二人の会話に疑問しかない



「じゃあ俺そろそろホテルに戻るわ」

コーヒーを飲み終えて、身支度を整えてた弟徹也がそう言って立ち上がる

「うん、気をつけて。杏奈ちゃんによろしくね」


それを玄関まで見送る倫子さん

「え?ちょっと待って、弟ここに泊まるんじゃないの?」


呆然としている俺を倫子さん越しに弟徹也が顔を上げた

「彼女ホテルで待ってるんで、だから姉さんのことよろしく、クソ真面目なお兄さん」


「……………っ」

最後まで馬鹿するように見下した弟徹也に俺は、もしかしてなにもかも担がれたのか?
一瞬の上がったり下がったりの感情の起伏にどっと疲れが襲ってきた

玄関の扉が閉まり思わず盛大な溜め息をついた


「どうしたの?」


「倫子さん、何なんですか?あの弟……」


「ごめんね、小さい頃は可愛かったんだけど、反抗期みたい」

リビングに戻った彼女がそう言って肩を落とす
倫子さんにとったらやっぱり可愛い弟なんだ



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