ヒミツにふれて、ふれさせて。
「どうかなー。それは正直分かんない。けど、珠理はそうやってあたし以外の子が好きなんだし、フラれたし、それは変わる見込みないからなあ。だったら、あたしのことを好きでいてくれる人と、新しい恋をしたいって思うかも」
「そっか…」
今度は、たまごやきをもぐもぐと食べている茶々ちゃんの気持ちに、少しだけ共感しそうになった。
…変わる見込みがない。
リョウちゃんとわたしは、これから何か起こるわけでもない。今までの、わたしが大切にしてきた恋はもう終わった。
だったら、新しい恋を、見つける…。
同じようなことを、近海くんからも言われたな、そういえば。
…なんだか、この2人の言っていることは、似ている気がする。
「でもまぁ、あんたの思うようにすればいいんじゃない。珠理のこと傷つけたら、絶対許さないけど」
ビシ!と、茶々ちゃんが持っていたフォークの先を目の前に向けられる。
「…傷つけるようなことなんて、しないよ…」
「本当ー?珠理はね、あぁ見えて色々と抱えてるんだって、近海が言ってたんだから。だから大変なこともあるかもしれないわよ」
「………うん」
珠理のこの間の話を聞いていると、結構家庭事情も複雑そうだし。色々と抱えているんだっていうのは分かってる。
わたしも、近海くんからは、「色々背負い込む癖があるから」っていうことを言われているし…。
でも、だからって、目の前の珠理が嘘なわけがない。あれは本物の珠理だ。
だから、あの珠理を見失わなければ、きっと大丈夫だと思っている。わたしも、近海くんも、茶々ちゃんも。
「…なんか、茶々ちゃん、吹っ切れた顔してるね。なんかあったの…?」
わたしたちの会話を聞いていた瀬名が、突然そんな質問をぶっこんできた。
わたしも、薄々感じてはいたけど、地雷だと思って避けていたのに…。勇者すぎる。
でも、その質問を聞いた途端、茶々ちゃんは、「なっ、何もないわよ!」と怒っていた。
その戸惑いに少しだけ違和感を感じたけれど、楽しい空気をこれ以上壊したくなかったから、そのままチャイムが鳴るまで、お弁当タイムを楽しんでいた。