ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…じゃあ、いつかリョウちゃんのところまで、取りに行くよ」
本当は今から行ってもいいけど、荷物になっちゃうもんね。なにより、みんなを待たせてしまっているし。
だけどリョウちゃんは、「あ、じゃあ」と言って、
「俺の部活帰りでよければ、めごの家まで届けるわ。もしお前がいなかったら、ポストの中に入れておくけど…それでもいい?」
…そう言ってくれた。
「あ…うん、リョウちゃんがそれでいいなら」
…なんだか、こんな風に事務連絡的なことをするようになる日が来るなんて、思ってもいなかったな。
つい1ヶ月少しくらい前は、この人と離れたくないって、泣いていたのに。もう、心穏やかに話せているというか、落ち着いているというか。そういう自分に、少しだけ安心する。
「…リョウちゃん」
「ん?」
呼びかけて、わたしの方に向けられるその顔は、もう苦しそうでもなく、悲しそうでもなか。優しかったリョウちゃんに戻って行っているような気がする。
「今のリョウちゃん、なんだか良い感じだよ」
やっぱり、わたしが好きだったリョウちゃんは、今、目の前にいるリョウちゃんだよ。
皮肉だけど、わたしたちが終わったことで、リョウちゃんが少しでも苦しみから解放されたのであれば、あの選択は正しかったと言えるのかもしれない。
「…ありがとう、めご」
やさしい笑顔で、リョウちゃんはわたしを見て。それから、右手を差し出してきた。その手にそっと、自分の右手を重ねると、きゅっと握られる。
「…めごも、しあわせになれよ。俺は、それを一番に願ってる」
「…うん、ありがと、リョウちゃん」
—— 別れがきたら、何もかも終わるんだと思っていた。リョウちゃんと、もう、こんな風に想いを重ね合うことなんて二度とできないと思っていた。
…でも、そうじゃないんだ。わたしたちのカタチは、そうじゃ、ないんだね。
「…じゃ」
きゅっと握られていた手は、そのまま離れて、ぶらりと下に落ちていった。もう一度リョウちゃんの方を見ると、その顔はやっぱり、やさしく笑っていた。
だからわたしも、何のわだかまりもなく、後悔もなく、“バイバイ” と、背を向けることができたんだ。
待っているみんなの元へ、向かうことが、できたんだ。