ヒミツにふれて、ふれさせて。
「ちょ……、」
陰になっていて見えづらいところだとはいえ、誰かにこの場が見つかってしまいそうで珠理の胸を少しだけ押し返す。
「…」
でも、その大きな身体は動かなくて、珠理も黙ったままだった。
…本当に、どうしちゃったの。珠理。
「…授業、始まっちゃうよ」
「…」
誰もいなくなった空間。その中に、わたしたちの声だけが響いてる。
珠理は少し甘えるように、すり…とわたしの頰に自分の頭を倒していたけれど、しばらくして身体ごとわたしから離れた。
「…ごめんなさい、」
「……」
「ちょっと、甘えたくなっちゃっただけ。帰りましょ」
「……」
カツ、と、一歩を踏み出して、そのまま首の後ろに手を添えながらわたしな背中を向ける。
笑っていたけど、やっぱりいつもの珠理とは違う。こんなに違う珠理は、初めてだ。
——— “色々と背負い込む癖あるからさ”
…いつかの、近海くんの言葉を思い出す。
——— “甘えてきたら、助けてやってよ”
「珠理……っ!!」
いつの間にか、呼び止めていた。
だって、やっぱり放って置けなかった。
何があったのかは分からないけれど、何かあるのは確かだって思った。
珠理がわたしに弱いところを見せるなんて、なかなかないから。
だから、わたしが聞いてあげたいって思った。助けたいって思った。
「…っ、珠理」
振り返った珠理に、何か言いたい。
カーディガンのポケットをぎゅっと握りしめて、その先に立っている人を、じっと見据える。
「珠理、わたし…なんでも聞くから!甘えていいから…!わたしを、頼って……!」
しんとした廊下に、わたしの必死な声が響いた。
誰かに聞かれていたら恥ずかしい。今はもうみんな教室だから、誰も聞いてないかな。
珠理はしばらく、わたしの方をじっと見ていた。笑ってはない。その高い位置から、わたしを見下ろすように、ただじっと、わたしの表情を見ている。
でも、その次の瞬間、その綺麗な唇が動いて今までに聞いたことのない言葉を紡ぎ出していく。