ヒミツにふれて、ふれさせて。
「わたしは大丈夫。でも、あんたがそうやって、隠れて不安そうな顔をしてると、やっぱり心配になるから…」
いつも、こんな顔はしない。普段の珠理からは想像できないような表情。
あの時…夢の中でサユリさんの名前を呟いたあと、わたしを抱きしめてきた時と同じ表情をしている。
「…何かあるなら、わたしが聞くから。言ってね」
本当はブルートパーズが付いた左手を掴みたかったけれど、怯えたようにポケットの中で震えていたからやめた。
代わりに、珠理の大きいブレザーに付いているボタンをきゅっと掴む。
「あんたは、わたしのこと、たくさん助けてくれたでしょ。だから…」
珠理に、何があるのかは分からない。だって、わたしが知っているのはほんの少しのことだけ。
お母さんである、サユリさんの存在と、サユリさんのことを “いない” ことにしていることと、近海くんから聞いた、珠理の家庭事情は色々と複雑だってことだけだ。
でも、その3つのことだけでも、今の珠理の不安そうな顔の原因は、予想することはできるから。
「ちゃんと、きいてあげるから」
「……」
珠理の目とわたしの目を合わせて、そう言った。伏せられていた目は、少しだけ力を取り戻して、その中にわたしを映していた。
そして、ふっと細められる。
「……めご、」
「…っ」
姿を見せなかった手のひらは、いつの間にかわたしの背中の方に回っていた。
そしてそれはぎゅっと締められて、珠理のふわっとした髪が、わたしの頰に触れる。