ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…っ、珠理…!?」


…思わず、名前を叫んでしまった。
ばかめご。そこは挨拶しないとダメでしょ。

でも、そんなことはもう、言っていられない。



『………めご…?』



だって、今その声を聴いたらもう、涙が溢れてしまいそう。



「珠理…っ、言いたいことがあってきたの…!突然来て、迷惑なのは分かってるけど…!いっ、一瞬だけでいいから、出て来てくれないかな…!」



まだ上がっている息を必死に抑えながら、インターフォン越しにいるであろう珠理に呼びかける。

…あぁ、かっこ悪い。こんなにボロボロな姿で、必死になっちゃって。なんでわたし、こんなにスマートじゃないんだろう。


少しだけ、色々整えてくればよかったって後悔をしていると、玄関の向こう側がドタドタと忙しい音がした。



何か、誰かと話している言葉が聞こえてくると思ったら、目の前のドアは、


「…っ」


勢いよく、開いた。




「………、めご」


そこには、部屋着に着替えている珠理。この間と、同じ黒い服を着ている。


久しぶりに見るその姿に、その声に…


わたしの心のなかで必死に保たれていた糸はもう、プツンと、音を立てて切れてしまって。


「………っ、しゅり」


わたしの意思とは関係なく、自分の方から、珠理の胸に飛び込んでしまっていた。


「え………」


上から降ってくる、ちょっと戸惑った声。
その低い声に、わたしはまた、ハッと我に返って。


「あ、あ、…っ、ま、間違っ…」


自分から触れた、温かい体温から勢いよく離れる。


「ごっ、ごめ…。わたし…、突然なにやってんだろ…はは…」

「………」

「き、気持ち悪かったね……、ごめ…」



—— “ごめんね” って、言いたかった。

どんな形でも。

珠理に会ったら、まずはごめんねって謝ろうと思ってた。聴いてあげられなくてごめんね。なにも伝えられなくてごめんねって。


でも、そう言おうとした時には、



「…っ、珠理……」



また、その大きな身体に、包まれていて。



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