ヒミツにふれて、ふれさせて。
・・・
ハニーブロッサムまでの道のりは、とてもとても長く感じた。
茶々ちゃんとの電話も終わって、あとは走って向かうだけだったのに、それでもとっても遠かった。
「っはあ、はあ、…っ」
歩いて20分以上かかる場所。坂道だってないわけじゃないから、ふくらはぎの筋肉だってパンパンだ。
息が切れようが、どーだっていい。メイクが落ちてようが、目が腫れていようがどーだっていい。
それよりも、今は珠理に会いたい。
「…っ、はあ…」
珠理は今、何をしてるんだろう。ちゃんとハニーブロッサムにいるのかな。
あの日から、顔も姿も見ていないから、急に不安になってきたよ。
連絡しようかとも考えたけれど、そんな時間があるくらいだったら走りたいと思ったからやめた。
「っ…はあ、つい…た………」
——あの日。
わたしが、珠理の家にお見舞いに行って。サユリさんのことを誤解して飛び出して行った日。
珠理は、この暗い道をすり抜けて、わたしを迎えに来てくれたんだっけ。
「…っ」
緊張する。急に、珠理が近くにいるような感覚が蘇って。心臓が、再び激しく運動を始めている。
「…っ、は…」
今までにないくらい、上がっていた息。
それを少しだけ整えて、インターフォンに手を伸ばす。
…この間より、震えている指。
ちゃんと、珠理は出てくれるだろうか。
クッと少しだけ力を加えると、ピンポーンと、勢いよく音が流れた。
息が上がった、紅潮した顔を見られたくなくて、カメラには映らない場所で待機する。
しばらく、シン…とした時間が流れていた。
いないのかな、オジサンも、珠理も。もしかして、どこか買い出しとかに出かけているのかな。
そう思って、この前オジサンの車が置いてあった方を、見た。
——その時だった。
久しぶりに、その声を、聞いたのは。
『…はい、美濃です』
それは、間違いなく、珠理の声だった。