ヒミツにふれて、ふれさせて。
座っていたクッションから立ち上がって、テーブルを挟んで向かい側に座っている珠理の方に身体を進めた。
ビーズクッションに身体を預けている珠理は少し驚いた顔をしていたけれど、そんなのを恥ずかしがっている場合じゃない。
…わたしは、もう、間違いたくないの。
「…珠理、聞いて」
「…」
珠理の両手を取って、わたしの方に向けた。左手首には、ブルートパーズのブレスレットが見える。
…会っていなかった今日も、こうやって付けていてくれていたのかな。
そう思うと、きゅっと胸が鳴った。
「…あのね、珠理。わたしは、どんな珠理でも、きらいになったりなんか、しないよ」
…もう、鼻の頭が、ツンと痛む。
待って、まだだ。泣くのはまだ待って。
「珠理はあの日、“わたしが引いてしまうのが、嫌われるのが嫌だ” って言ったよね」
「…っ」
…本当は、この言葉を、あの日のうちに言ってあげられれば良かったんだよね。そうすれば、こんなに苦しい顔をさせることも、なかったのかもしれない。
「…でも、珠理。それは違うよ」
ギュッと、掴んでいた珠理の手のひらを握った。
…大きな手。いつもわたしを守ってくれていた手。
でも、今度は。
「わたしは、珠理がどんなヒミツを持っていたとしても、きらいになんか、絶対にならないの…!」
今度は、わたしが、この手で守ってみせるよ。
小さくて、頼りないかもしれないけど。