ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…なんで、隠そうとしてんの?まぁ、今は一緒にいるのが俺だからなのかもしれないけどさ」
「…」
「本当はさ、やばいこと、されてんじゃないの?」
「………」
近海くんは、軽い口調でグイグイと踏み込んでくるから、たまにこわい。
にこにこした顔の裏には、何を抱えているのか分からないような、そんな顔をする。
でも、それを包み隠すような優しい声で、わたしに問いかける。
「…なんで…、別にやばいことなんてないよ…」
やばいことって、何?近海くんは、何か気づいているの?わたしが、リョウちゃんにされていること、知ってる?
「そう?それならいいんだけどさ、」
「…」
近海くんは、もう一度シャープペンを持って、問題を解き始めた。「ごめんね、忘れて」と、また軽いノリに戻って。
「…珠理が、ものすごくめごちゃんのこと、気にしてるから。そういう姿見てるとさ、俺には言えなくても、珠理には話してみればいいのにって、思うことあるから」
…そう言って、少し困ったように、にっこりと笑った。
—— “珠理が気にしてるから”
きっと、本当のことなんだろうな。珠理はいつもわたしを助けてくれる。この間だって、倒れたわたしの様子まで見にきてくれて。
…心配されているっていうのは、分かってる。
ちゃんと、分かってるよ。
「…めごちゃんは、今の彼氏が好き?」
「えっ?」
不意に聞かれた、質問。そういえば、珠理と1日の質問は3つまでとか、話したことあったな…。
アレ、結局おざなりになってしまったし。まぁ、いいけど。でも、なんだかあの日を思い出してしまう。
…同じ質問を、されたから。
「…うん、好き。リョウちゃん以上に好きになれる人なんて、いないよ」
…そう、いないんだ。わたしは、リョウちゃん以外の人を好きになるなんて、考えられない。