奏でるものは 〜功介〜


「病院で……亡くなった後に治療のために金属類を外したって手渡されたの。

父にもらったネックレスと一緒に指輪があった。
大切な人がいたんじゃないかって、その時知ったの。

姉は指輪をつけたまま、病院に運ばれたの。
家では見たことなかったから、本当に驚いたわ。

家族には隠してたけど、大切な指輪だったんだね」


「…………そうか」


そう呟くだけしか出来なかった。


「あの指輪は、俺と会うときは必ずつけてた。
俺はいつもつけてたけどな。
それで、優たちに冷やかされたよ」


歌織ちゃんが微笑んだ。


「お姉ちゃんはその指輪で幸せだったのよ。

だから、唯歌のところに置いておきたいの。

功介さんは、新しい指輪をつけて幸せになってほしい」



「……唯歌が離れるのか?」



「貪欲に幸せを求めることが、生きていくことでしょ?
功介さんは、生きていくの。

好きでも、幸せのために別れることもあるから」






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