奏でるものは 〜功介〜


家の裏側の扉から直接、小さな車庫へ行き、中型のバイクを出そうとシャッターを開けた。

シャッターを開けると面している道は、近所の女子校の生徒が時々、駅までの裏道として通り過ぎる道だった。


センターラインも歩行者用の白線もない道路。


バイクを押してその道に出ようとした時。


歩いていた女子校生がバイクに驚いたのか、こっちを向いた。



一瞬、心臓が止まるかと思うほど、内臓がうねった気がして体が時を止めた。



俺の視線を感じたのか、彼女も俺を見た。


彼女はスマホを手に、しばらく目が合ったまま、それでも歩を進ませて、また前を向いて歩き去った。


駅の方に曲がるまで彼女を見ていた。


それからはいつものようにバイクのエンジンをかけて、溜まり場まで行った。





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