奏でるものは 〜功介〜
《唯歌side》



ファミレスに入り、それぞれ飲み物を取ってくると、

俺、トイレ行ってくる。


そう言ったコウスケが一人で行ってしまった。


「唯歌ちゃん、ごめんね」


そう言った龍くんに、いえ、と言いながら少し笑った。

同じ青欄で幼稚園から一緒らしい。

今日のデートの邪魔は偶然ではないのかも、と思ったけど聞かないでおいた。


「そうそう、前にさ、デート中に俺、電話した?」

昌くんが聞いてきた。

「……?……あ、そういえば1回電話掛かってきてた。それって昌くんなの?」

「そ。多分それ。

功のヤツ、怒っててさ、あの後、俺ダンボールで叩かれたんだよ。

今日のこともまた怒るかもなぁ。
アハハ…アイツ、マジで唯歌ちゃんのこと好きなんだね」

「みたいだな」

優くんも否定しない。


「アイツ、優しいか?」

龍くんは穏やかな人らしい。

「うん」

「そっか、良かったよ」

「仲良くしてやってくれよな」

優くんか言うと、昌くんも龍くんも笑顔になっていた。


「仲良いんだね」

3人がコウスケを思い遣っているのが、よく分かった。


コウスケが戻って来ると、昌くんが言った。


「あぁ、やっぱりなぁ!」

「何がだよ?」

コウスケが返すと昌くんが


「それ、ペアリングじゃん。
優、龍、見ただろ?コウスケくんって、意外にもロマンチストだったんだなあ」


冷やかすように言うと、龍くんも優くんも笑いながら私達の手元を見ていた。


うるせー、と呟いたコウスケにわざとくっついて右手の手の甲を見せた。


「写真とって〜」


と言うと昌くんが、了解、とスマホで写真を撮ってくれた。


その写真は、コウスケを経由してスマホに送ってもらった。
二人の写真は嬉しかった。

しばらくファミレスで喋り、行こうか、と言ったのは龍くん。
気を遣ってくれたのかもしれない。


「じゃあ、また会おうね、唯歌ちゃん」

「ありがとう」

結局奢ってもらって、三人とは別れた。



「ものすごく邪魔された……」

2人で歩きはじめたとたんに呟く声にちょっと笑った。

「そう?コウスケの友達に会えて良かったわ」

「唯歌がそう言うなら、ま、いっか」

文句を言ってるコウスケの腕を持って、キスできない分、体を、くっつけた。




コウスケと駅で別れてからも、今日のあの三人との出会いと、コウスケの嫌がり具合を思い出して、笑ってしまった。

でも、楽しかったし、写真を撮れたことは、嬉しかったんだけどな。






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