奏でるものは 〜功介〜


大きなホテルに着いて、ロビーを進むと、披露宴で使われる会場に入った。

企業の身内が集まるパーティと言う懇親会で、今日ゆっくりしてた優や龍は来ないのだろう。

会場はピアノの生演奏が流れている。


「ピアノはサイタグループの方よ。
サイタ主催じゃないけど、うちのパーティでもお世話になってるから」


母が言った。

席に着き周りを見ると、同級生の頼斗や優のお兄さんもいる。


強制されない限りは、挨拶にも行かない。

働き始めたらそうは行かないことは分かっているから、いまは執行猶予だとおもっている。


頼斗や優のお兄さんの明良さんには喋りに行こうかな、と思っていた。


主催の方の挨拶に始まり、乾杯をして、挨拶回りの歓談の時間も、ゲームの時間も楽しくはないが、立場が下の者として、盛り上げ役にならざるを得なかった。

頼斗も少し離れた場所で、同じように頑張っていることが、少し心を強くしてくれた。



< 41 / 168 >

この作品をシェア

pagetop