副社長のいきなり求婚宣言!?
「あの工務店の社長、指輪をしていたな。

 馬鹿馬鹿しい。あんな大した玉でもない男のために、なぜ君の才能を無下にしなければいけない」

「どう、して……」

「どうして知っているのかって? 君が描いた画を見ればわかる。

 誰かのために、その誰かと一緒になりたいって思いが、君の描いた画には溢れていた」


 心の中を覗かれてしまったように恥ずかしい。

 私の不純な気持ちが、今まで書いてきた画に溢れていたなんて。


「もっとも、元社長殿の書いた図面の粗さを見れば、同一人物が描いたものとは思えない出来映えだったからな。

 あの会社から引き揚げてきた図面のほとんどは、他の誰かに描かせていたのは一目瞭然。

 ……“M.ayane”。“あやね”という名の女性、つまり、君だ」

 
 もう過去に葬ってきたものを、無遠慮にぶちまけられて、心が破けてしまいそうだ。

 干からびた目から、滲み出てくる心の痛み。

 それを見られたくなくて、背けて上げられなくなった顔が、不躾な長い指に掬われる。
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