副社長のいきなり求婚宣言!?

 副社長……


 薄っすらと閉じただけの瞼を開けると、切なく苦しそうな瞳がゆらりと揺れて、額にそっと口づけを落とされる。


「こっち、おいで」


 いつになく柔らかな声が私をいざなう。

 手を引かれて連れられたのは、副社長室内に作られた別室。

 大きなテーブルの奥。

 デスクトップPCの前に座らされると、背後から伸びてきた綺麗な長い指が電源ボタンを押した。

 黒い画面に浮かび上がったPCメーカーのロゴ。

 それを見る私を囲うようにデスクに手をつく副社長は、背後から私を覗き込んで、また口唇を重ねてきた。

 食むように落とされるキスに、胸がときめきでいっぱいになる。


 どうして……?

 副社長、どうしてキスなんてするんですか?


 触れたところから、聞きたくても聞けない問いを送る。


 私、好きなんです、副社長のこと。

 だから、これ以上好きを膨らまさせないで。

 ……怖いの。

 これを描き上げてしまったら、もうそばにはいられなくなる。

 そしたら、もう描けなくなりそうで、怖い。




.
< 83 / 104 >

この作品をシェア

pagetop