副社長のいきなり求婚宣言!?
 せっかくときめいた胸が、瞬く間にしゅんと萎れる。

 心の痛みをかばうように、人波から抜けようとした瞬間、……遠く遠い場所から、副社長の視線が、不意に私の方へと向けられた。

 私を見たかどうかなんてわからないのに、胸が期待に弾ける。

 うぬぼれちゃだめだと自分をいさめる私に向かって、副社長の瞳は目尻をほぐしてやんわりと微笑んだ。


 どかんと一瞬で打ち抜かれる心臓。

 私宛じゃないかもしれないのに、全身の血管がぶわっと沸き立つ。


 だけど、昨日のことを思い出したら、もしかしたら勘違いでもないのかもしれないんじゃないかって、思ってしまう。


 マウスに置いた手に、重ねられた大きな掌。

 驚き振り向く私に、またしても柔らかなキスが落とされた。

 製図のためにソフトを立ち上げ、操作方法を教わっていただけなのに、耳を舐るように指示してきた声はとてつもなく甘く、私の心と身体を震わせ続けた。

 退社を急かす警備からの内線が鳴るまで、何度もらったかわからない口づけを思い出し、緊張感漂う朝のロビーで、一人羞恥に悶えた。



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