お兄ちゃん、所により彼
武見家事情1 武見葵
武見家は複雑である。
まず、祖父の代の兄妹が凄まじい。

一番上の長女は生涯妾をやり通す程の美人でミス心斎橋。次の長男は何を考えているかわからないサイコパス的なイケメン。3番目の次男は、武見葵の祖父であるが、ディスコに行けば逆ナンの嵐、4番目の次女は姉に負けず劣らずアイドル顔という、今の言葉で言う所のチャラさを持ち合わせた美男美女兄妹であった。

しかしある時遺産分けで大揉めする。
長男が祖母の遺産を丸ごとバツイチの女との結婚式に使ってしまったのだ。
長女はその美人な顔を鬼のように引きつらせて一言で弟を追い出した。

「お前なんぞ勘当じゃ。去れ。」

戦後の混乱の中、父母弟妹達の生活を支えたのは間違いなく長女であり、長男の弟が働くようになったことでその役を弟に期待していた矢先であった。


もしこの事件が無ければ、大おばちゃまは幸せな結婚をして子供を産んで幸せな家庭に入れたのかもしれない。
美人な大おばちゃまは妾のまま1人で生きて1人でボケて1人で病院で亡くなってしまった。
武見葵、小学校四年生の時のお話。
武見家を次男である祖父が継ぎ、兄が事故で亡くなってしまったためその後を継いだ父の長女である葵が、この悲しいお話や残された物を継ぐことが決まっていた。

小学校のませた時期に友達が結婚の夢を膨らませる中1人いつもこう言った。
「私、名字変えられへんからなぁ。」
実際あまり名字は当時の頃から変えたくなかった。武見の名字が好きだった。

しかし前述の通り、祖父の代で揉め事が起こったため、また父の兄が若くして亡くなっているため、武見の年の近い親戚に会ったことがなかった。
お盆休みに友達が田舎に帰り、親戚のお兄さんお姉さんと遊んだという話を聞き、帰る田舎も無ければ帰ってくる人もいない葵はいつも寂しく感じた。
「ええなぁ、私もお兄ちゃんお姉ちゃん欲しいわ。」
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