あなたと同居なんてありえません!
「ちょー元気だよ! ちょっと考え事してただけだから」
と、笑顔で言った。もちろん、作り笑いだ。
あげた口角がひくひくしてて、自分でも笑ってて目が笑ってないなって感じるくらいには、作り笑いが下手くそだ。
でも、一応信じてくれたみたい。
「陽葵、好きな人とかいないのか?」
「ぅえっ?」
あ、あっぶない……!
口の中に入っていたご飯を出しそうになった。
いきなりなんなんだ、お父さんよ。
ビックリしすぎて、嫌いな奴の前でご飯を吐くところだったよ。
「い、いないけど? 急になに、お父さん」
お父さんに、嘘をついた。
「青春してないのかー? いやぁな、こんなかっこいい玲くんが学校に、しかも同学年にいたら惚れてるんじゃないかなって思って」
いえいえいえ! 惚れませんとも!
こいつ、七瀬玲が、女たらしの時点で無理だから!
っていうか、私、イケメン全般無理なんだよね。
完璧すぎて怖いというか、ついていけないというか。
だから、七瀬玲はイケメンというだけでも苦手なのに、さらに女たらしまで加わった、私からしたら超最悪な人物なのだ。
……ただ1人だけ、例外が存在するんだけど。