あたしたちの恋模様
「ヒロ、やめろ」



俺の腕を掴んで、上村との間に距離を作らせる。



「帰るわ」



部活をするような気分じゃなくなって、心結が置いてったであろうカバンを持つ。



「もう帰んのかよ」


「文句ならそこの女に言え」



肩にカバンをかけて、出口へと向かう。

練習着に着替えたままだけど、いいや。

そして、ポケットからスマホを出して耳に当てる。



「話し中かよ……」



聞こえてきたのは無機質な電子音のみ。



「泣いたかな……」



俺のことで泣いてくれるならとか思っちゃう俺は、重症なのかもしれない。
俺のことで傷ついてくらるならと。

本当はずっと、俺のことで頭をいっぱいにしてしまいたかった。
俺のことだけを考えて欲しかった。

俺なんてそんな存在になれっこないのに。
いつまでたっても、心結にとってのそんな存在は悠貴で。
どう頑張ったって俺はその地位には行けない。

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