ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
(私にしたように、誰かにした……キスして、優しく抱きしめて……他の人に……)
葵は自分の腕をつかむ指に力を込める。
「いない」
「嘘」
「嘘じゃない」
蒼佑はきっぱりと言い放つ。
「許嫁を解消した後、君以外に好きだと思った女性はひとりもいない」
「――でも」
「言い方を変えよう。この八年、君以外に口づけた女性はいない」
「っ……」
再会したあの日の、強引なキスを思い出した葵は、また息が止まりそうになる。
「葵……」
思っていたより近くで声がして、また、心臓が口から飛び出るかと思った。
ドキドキし通しだ。
戸惑いながら顔をあげると、蒼佑が壁に手をついて、顔を近づけている。
一応、距離を取っているつもりなのだろうか。けれど近い。
「そんなの……無理でしょ……?」
葵だって、もう十代の女の子ではない。
現実、婚約を解消しているなら、彼がどこの誰とそういう関係になろうと責められるものではない。
だが蒼佑の態度は変わらなかった。
「どうして? 好きでもない女を抱いたりしない。俺が抱きたいのは、今も昔も、君ひとりだ」