ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 複雑な気持ちになりながら、蒼佑を見あげる。

「――ん?」

 葵のものいいたげな視線を受けて、グレーの瞳が、きらめきながら葵を見下ろす。
 葵は一瞬、言おうかどうか迷ったが、勇気を振り絞って、軽く頭を下げた。

「私、再会してから、けっこうひどいことばかり言ってたし、態度も悪かったと思う。謝ります……ごめんなさい」

 すると蒼佑は驚いたように目を見開いて、首を振る。

「いいんだ」
「でも……いや、本当によくなかったと思うから」

 葵は唇を引き結んで、しっかりと蒼佑を見あげる。

 自分を辛い目に合わせた男だから、傷つけてもいい。そういう気持ちが、確かに葵にはあったのだ。

 すると蒼佑も少し考えるように目を伏せた後、

「俺も、悪かった。ずっと一方的で、強引だった」

 とささやいて、葵の手を握った。

「追えば逃げられるとわかっていたのに、我慢できなくて、今君を見失ったら、二度と会えない気がして……」

< 132 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop