ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 だが、葵はそんな蒼佑に恐怖しか感じなかった。

(なぜ、どうして!?)

 激しい混乱の中、全身がガタガタと震え始める。
 口の中がカラカラになって、声も出なくなった。

 ただ、この悪夢から早く目が覚めてほしい。
 それしか考えられなかった。

 この八年、葵は蒼佑のことを忘れたことがなかった。
 何度も忘れようと思っても、かつて、皆が認めてくれていた婚約者同士の頃の、優しくてきれいな思い出ばかりがよみがえり、葵を苦しめ続けた。

 二十六歳の、過去八年だけではない。

 それ以前の、彼を好きだったころの幸せな記憶まで、葵をさいなむ悪夢に変わったのだ。

 キイィィンと、耳鳴りがする。

 目眩が止まらない。全身から血の気が引いて、立っている足に力が入らない。

 意識が遠のくのが自分でもわかる。

「――」
「葵……?」

 じっと黙っている葵に異変を感じたらしい、

 蒼佑が顔を覗き込んできた。

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