ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「そう。でも、犯人は捕まった」
「犯人?」

 自分は会場を出て、階段の途中で立ち止まってスマホを見た。一応、後から来る人のことを考えて、階段の端に避けていたのだが、邪魔だと体当たりをされて、階段から落ちた。
 だから自業自得だと言われるのではないかと、思っていたのだ。

 葵が眉を顰めると、蒼佑は顔を覆っていた手を外して、近くに置いてあったパイプ椅子を引き寄せて、腰を下ろす。

「周囲には目撃者がたくさんいたんだ。君が階段の端に立ち止まってスマホを見ているところに、後ろからすごい勢いでぶつかっていく女がいたって」
「女……」

 やはり自分が聞いた声は、その突き飛ばした女だったらしい。

「階段には充分スペースがあったのに、全力疾走でぶつかっていったんだ。大勢の人間が見ていたから、わざとやったんだと、すぐに捕まえられた。当時、警備員があちこちで退場する観客の誘導をしていたからね」

 そして蒼佑は、深いため息をついた。

「それと、まだはっきりしてないけど、たぶんナツメくんに脅迫状を送っていた人物と同一だろうと、警察はみている」
「――えっ?」
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