ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
すぐにエレベーターは降下していく。
エレベーターはひとつしかない。これで葵が降りれば、追いかけては来れないはずだ。
「はぁ……」
蒼佑がいなくなって、初めて空気が吸えるような気がした。
ゆっくりと立ち上がると、何度も深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。
一瞬、スタジオの階に停まるかと思ったが、エレベーターはそのまま降りていく。
「とりあえず大内さんには、謝っておこう……」
メッセージアプリで『ナツメには言わないで』とだけ送った。
そして一階に降りたところで、目の前にある階段から、ピンストライプのスーツの男が転げるように降りてきて、葵は仰天した。
なんと蒼佑は、エレベーターよりも早く駆け下りてきたらしい。
「――はぁ、待って……くれ……はぁっ……」
息が上がっている。そしてきれいに整えた黒髪は乱れ、額に散らばっていた。
それもそうだろう。階段を八階、全速力で駆け下りれば疲れるに決まっている。
だがなぜここまでするのだろう。
今さら自分達の間に、なんの会話が必要だと言うのだろう。
「どこまでも追いかけてくる気なの?」
葵は後ずさりながら、目の前の蒼佑を見詰めた。