ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「はい」
葵はうなずきながら、問いかける。
「私の事をご存じだったんですか?」
「いいえ。つい最近よ。二週間ほど前かしら……」
りか子はハンカチを小さなバッグから取り出して、口元を押さえる。
「せっかく帰国してきたのに、ほとんど実家には寄り付かないし……。帰って来いと言っても、いつも適当に流されてしまうの。一人息子なのに、寂しいわね、なんて笑っていたのだけど……。どうも付き合っている女性がいるらしいと噂を耳にして、調べさせたの」
そしてりか子は、膝の上でぎゅっとハンカチを握りしめた。
「本当に、びっくりした。こんなことがあるのかって、驚いたわ」
それはそうだろう。当事者である葵と蒼佑だって、偶然の出会いに驚いたのだから。
「それでね。率直に言うわね。あの子とは別れてほしいの」
「――」
今さら、驚きはしなかった。
そうだろうと、葵は素直にその言葉を聞いていた。
無言の葵の感情を測りかねたのか、りか子は困ったように笑う。