ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
蒼佑に会いに天野家に行き、門前払いされてから、もう八年が経つ。
(時間が経つのは早いな……)
葵はそんなことを思いながら、お茶をテーブルの上に差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう。いただくわ」
さすがにダイニングでというわけにはいかないと思い、入り口近くの和室で、りか子と話をすることにした。
長い髪をアップにした薄紫の絽の小紋姿のりか子は、ひと目でどこぞの奥様とわかる、鷹揚とした雰囲気がある。美しい人だが、顔立ちは蒼佑とあまり似ていない。どちらかというと、和風のスッキリした美人だ。
かつて、葵が蒼佑の許嫁だったころは可愛がってもらった記憶があるが、そのころと同じ気分では、当然いられるはずもない。
この状況で、用件を尋ねるのも、馬鹿らしい。蒼佑が会社に呼び出されたタイミングでやってきたのだから、葵個人に話があるのだろう。
葵はりか子の正面に腰を下ろし、彼女が口を開くのを待っていた。
「急に来て、ごめんなさいね。でも、今日しかないと思ったから」