ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 相手は自分よりずっと人生経験が豊富そうな渉である。葵はいまさら隠しても仕方ないと、素直に思っていることを口にした。

「へ~……まぁ、憂いある美人だとそういうのも似合うけど」
「えっ、それって、私がそうじゃないから悩むなってことですか?」
「そうよ」

 きっぱり言われて、葵は笑ってしまった。

「もう……」
「あ、ブスって言ってるんじゃないのよ。あんたに悲しい顔は似合わないって言ってるだけよ、うふふっ」

 渉はわざとらしく肩を竦めて笑うと、それからカップに残っていたコーヒーに口をつける。

「あんたはもう、大人でしょ。過去に何があったのか、あたしは知らないけれど、ある程度のことは、自分でどうにかできる年になったんじゃないの?」
「津田さん……」

 確かに葵は、八年経って大人になった。もう十代の少女ではない。あの頃はただ状況に流されて、悲しむことしかできなかったけれど、今は違う。
 幸せになりたいと願い、望んでもいい。そしてそのために頑張ってもいいのだ。
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