ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「そうですね……」

 葵が笑顔になると、渉も笑う。

「がんばんなさいよね」

 そして彼は、残っていたコーヒーを飲み干すと、さっさと立ち去ってしまった。

(ありがとうございます)

 葵は心の中で、渉のその背中に頭を下げた。
 さりげない会話だったが、たくさん勇気を貰えた気がした。



「ただいまー」
「あっ、葵ちゃん、お帰り!」

 ナツメが制服にエプロン姿でひょっこりとキッチンから顔を出す。

「あのさ、ついさっき天野さんから電話あって。ごはん食べに来ることになったから」
「えっ?」

 目を丸くする葵に、ナツメは唇を尖らせてメッという表情を作る。

「電話、出ないって言ってたよ」
「ああ……マナーモードで気が付かなかったみたい」

 バッグの中からスマホを取り出すと、確かに蒼佑からの着信が残っていた。
 基本的に携帯にあまり触ることがないので、連絡があっても気が付かないのだ。

「もうっ……葵ちゃん、それ何回言っても治らないんだから。困ったもんだよ」

 ナツメはブーブー言いながら、またキッチンへと引っ込む。
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