ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「はい。偶然、再会したんです。春……本当に偶然」

 そして蒼佑は唇を噛みしめる。

「ですが彼女は、ずっと俺を受け入れてくれなかった。当然ですよね。八年前、彼女が俺の気持ちを確かめに家に来てくれたことを、俺は知らなかった。そしてそのまま逃げるようにアメリカに渡った。彼女からしたら、婚約破棄しておいて、見捨てたも同然です。そんな俺に振り向いてくれるはずがない」

 そして蒼佑は、くしゃりと髪をかき上げる。

「でも、葵はやっと、俺を受け入れてくれた。過去の俺を許し、そして今の俺を好きになったと言ってくれた。本当に嬉しかった……こんなに嬉しかったことは、人生で二度とないと思ったくらいです」

 ポーン、と音をたてて、エレベーターが停まる。
 三人で、エレベーターを降り、蒼佑は立ち止まる両親に向きあう。

「でっ、でも、蒼佑さん、あなたに私は幸せになってほしいだけなのに!」

 りか子が今にも泣きだしそうな顔で、息子に詰め寄る。

 そう、本当に、彼女の中ではそうなのだろう。
< 299 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop