ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「素敵なお嬢さんだったわね」
りか子が楽しそうに言いながら、エレベーターに乗り込む。
一方久しぶりに会う父、司(つかさ)は、なんだか腑に落ちない顔をして、蒼佑を見る。
「だが、見合いだなんて、急すぎやしないか。蒼佑が帰国して、まだ三か月もたっていないんだぞ」
「あら、あなた。この子は気が優しいから、少し強引なくらいがいいんだわ」
その言葉に、せめて実家に帰るまではと、我慢していた蒼佑の中で、ぷつんと切れる音がした。
母はわざとこの見合いのことを黙っていたのだ。
そしておそらく――葵のことを、知っている。
「母さん。わざと見合いを仕組んだでしょう。俺に何も言わせないために」
自分でも驚くほど低い声が出た。
父の隣で、一瞬たじろく母の様子が見て取れた。
「――蒼佑?」
司が驚いたように、目を見開く。
「父さん。実はね、俺は今、椎名葵さんと付き合っています」
「蒼佑さん!」
遮るようにりか子が声を挙げたが、蒼佑は首を振る。
「椎名って……あの?」
司にとっても、椎名の名は特別だったらしい。
すぐに葵のことを思いだしたようだ。