ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 まさか【よかった、嬉しい】と言われるとは思わなかったのだ。

(変な人……)

 葵はそう、自分に言い聞かせながら、思うようにならない苛立ちを抑え込んだ。

 この期に及んでの、“愛している”という蒼佑の言葉を、葵はまったく信じていなかった。

 彼は昔もそうやって葵に、優しくふれて、まるでお姫様のように扱った。

 彼の言葉を信じて、裏切られて、葵は言葉の無力さを知った。

(愛してるなんて、いくらでも言えるわ。タダだもの。愛していなくたって言える。嘘を口にしたところで、彼の人生においてペナルティなんてなにもない……)

 今は、どれだけ甘い言葉をささやかれたところで、葵の心の穴を虚しく通り過ぎていくだけだ。

 そして、いくら近づかれようが、自分が彼を相手にしなければいいだけのこと。
 顔も見たくない気持ちは、いくら甘い言葉を言われたところで、まったく変わらなかった。

「ナツメには絶対に知られないようにしてください。昔のことで、あの子を煩わせたり、悲しませたりしたくないの」

 葵は感情を押さえて、念を押した。

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