ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
【わかった。じゃあ……】
そして電話が、大内に戻されたらしい。
【葵さん】
少し強張った声で、名前を呼ばれて、葵は申し訳ない気持ちが膨れ上がってきた。
「大内さん、ごめんなさい。変なことに巻き込んでしまって」
【いや、それはいいんですけど……】
それからしばらく、間があく。おそらく、蒼佑がこの場から離れるのを見計らっていたのだろう。
【彼はHFの御曹司ですよね……。その、葵さんは、昔、彼とお付き合いされてたんですか?】
誰にも言いたくない過去だが、ここで隠しても仕方ない。
葵は諦めて正直に答えた。
「お付き合いっていうか……家同士が決めた婚約者だったの」
【えっ!?】
「なかなか古めかしい制度でしょ? でも、私の家が没落して、それがご破算になった。よくあることよ」
そう、よくあることだった。よくあることだとわかっているのに、本当はそうやって受け止められない。