ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「あ、なっちゃん、行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃい。気を付けて」
蒼佑はにこやかに手を振って、ナツメを見送ると、葵がしめてくれたネクタイに触れて、「ありがとう」と微笑む。
「もう……ネクタイなんて、自分で出来るでしょ?」
「できる。でも葵にしてもらいたい」
そして蒼佑は、葵の背中を抱き寄せて、額にキスをする。
「そして夜は、君の手で、指で、このネクタイをゆるめてもらいたい」
色っぽい声でささやかれると、葵は赤面するしかない。
「もう……」
だが、仕方ない。葵は蒼佑のことを愛しているのだ。こうやって隙を見つけては葵に触れようとする彼を、可愛いと思ってしまう。
「夏に、長めの休みが取れそうなんだ。ご両親に会いに、ナツメ君と三人で、オーストラリアに行こう。で、その前に、椎名先生のお墓参りにも行こう」
「――うん」
葵はうなずいて、そのまま蒼佑の背中に腕を回した。
ではその前に、両親に手紙を書いて知らせておこう。
再会した彼との間に起こった長い話を、うまく伝えられるだろうか。不安はゼロではないが、時間がかかっても、理解してもらうつもりでいる。
『時間がかかったもんだな』と、祖父も天国で、笑ってくれるだろう。
そう思うと夏が楽しみになった。
番外編・end