ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「本当は隣がよかったんだけど……とりあえずこれで、俺の当面の憂いは減ったよ」
そして蒼佑も、葵にネクタイを締めてもらいながら、極上の笑顔を浮かべていた。
なんと彼は、気が付けば葵とナツメが住むマンションの住人になっていた。
彼曰く、『たまたま売りに出ていた』らしい。
もともと分譲マンションなので、そういうこともあるかもしれないが、たまたま売りに出ていたからと言って、即購入、即引っ越しの蒼佑の行動力には、驚くしかない。
そして、蒼佑を不安にさせないために努力すると言った手前、
『毎朝、俺のネクタイを結んでほしい』
という蒼佑のかわいいおねだりを、無理だと断ることはできなかった。
そして蒼佑は毎朝ナツメと葵と三人で朝食を取り、葵にネクタイを結んでもらうことに、深く幸せを感じているようだ。
先日感じたような陰りを、蒼佑から感じることはなくなっていた。
「はーっ……つら。まさか姉とその恋人のイチャイチャを毎日見せつけられるようになるとは……つらーっ! 早く大人になりたい!」
ナツメは深く嘆きながら、舞台役者のように大げさな身振り手振りで嘆きつつ、「んじゃ、行ってきます」と、通学バッグを持って出て行った。