ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 十代の傷がいまだに癒えない。
 早く忘れてしまいたいのに、傷口を確かめるように、考えずにはいられない。

 そんな自分が、葵は嫌いだった。
 葵は蒼佑以上に、自分のことを嫌悪していた。

【ナツメくんは知らないんですよね?】
「もちろん。なっちゃんが小さい頃の話だから。うちは普通の家だって思ってるもの」
【ナツメのこと、芸名だから、葵さんの近親者だとわからなかったんでしょうかね】

 大内がしみじみした口調で、ささやいた。

 椎名棗は“NASTU”という芸名で活動している。あくまでも学業優先で、基本的には今日のような休日、もしくは放課後にしか仕事をしない。
 そんな露出を押さえたミステリアスな部分がある一方で、彼自身のあけすけな内面は、まるで詩を紡ぐようにしてSNSで語られ、インターネットを通じて拡散していく。

 十代の女の子たちにとって、彼は自分だけの王子様のように見えるのかもしれない。
 そんな不思議な魅力が、女の子たちの圧倒的支持を受けて、各種SNSでは数十万単位のフォロワーを誇っているのだ。

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