ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
今回の撮影は、満を持して事務所が選んだ、大きな仕事だとナツメから聞いていた。
「そうだと思います」
葵はうなずいた。
母親似の弟と、父親似の自分はあまり共通点がないが、椎名棗という名前を聞けば、葵の幼かった弟のことを思いだすだろう。
今回の仕事だってどうなっていたかわからない。
複雑ではあるけれど、葵としては、ナツメの仕事の邪魔だけはしたくないと思っている。ナツメの夢を邪魔することはできない。
こうなった以上、絶対にばれないようにしてもらうしかない。
【とりあえず、僕は知らないふりをしていたほうがいいってことですね】
「ごめんなさい……なっちゃんにだけは知られたくないから」
【わかりました。とりあえずこっちは任せてください】
大筋を聞いて納得してくれる大内には、感謝しかない。
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
色々問題はあったが、彼にまかせていれば、大丈夫だろう。
(なんだか疲れちゃった……)
葵はホッと胸を撫でおろしながら、通話を切り、ため息をついていた。