ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 なんということもない、昨日の事さえなければ、平和な朝だった。

 小一時間の長い朝食を終えてから、葵は身支度を整える。長い髪をゆるく巻き、それから後ろでひとつ、華美ではないバレッタで留める。

「はふ……」

 職場では制服を着るので、出勤はカジュアルで構わない。

 軽くあくびをしながら、薄い水色の長袖シャツにベージュのパンツを履いた。

 葵が働き先として百貨店を選んだのは、朝が遅いからだ。普通の会社より一時間遅くて済むというのは、それだけでありがたい。

 葵は契約社員だが、残業がないほうがありがたいので、できればこのまま仕事を続けられたらと、思っている。

 葵に将来の目標や、夢はない。
 結婚願望は当然ゼロだし、男性に興味もない。

 ただ弟のナツメが側にいる間は、まっとうに見えるように、社会の一員として働けばいいとしか思っていない。それだけの人生だった。


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