ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
ナツメに見送ってもらって、葵は仕事へと出かける。
(小学校からずっとこの調子だもんね……もう、どうにもできない……早起きも、無理……)
少し空いた電車に乗って、葵はぼんやりと窓の外を眺める。
そこでふと、思いだしたことがあった。
(そういえば……)
こんな葵だが、ほんの数年、早起きを頑張ったときがある。
葵が蒼佑と出会ったのは、中学を卒業する直前だった。
本当は最初から、顔合わせのつもりだったのだろうが、葵は祖父から、
『高校の勉強についていけなくなると大変だからね。家庭教師の先生をお願いしたよ』
と、蒼佑を紹介された。
『はじめまして』
少し恥ずかしそうに笑う蒼佑の、まるで小説の中から飛び出してきたような美青年ぶりは、十五歳の葵には、あまりにも大人だった。
『ちょっとカッコよすぎて……困る……』
両親から蒼佑先生はどうかと聞かれた日、そう答えて笑われたことを、葵は昨日のことのように思いだしていた。