ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 だが仕方ない。

 母も祖母もかつて通ったという、古式ゆかしい女子校通いの葵からしたら、彼は礼儀正しく、美しく、端正なたたずまいをしていて、あまりにも眩しすぎる存在だった。部屋でふたりきりになるのも恥ずかしく、一年はリビングで勉強を見てもらっていたくらいだ。

『葵さんは、ちゃんと勉強の仕方さえ理解できれば、もっと成績が伸びるよ』

 そういう彼の言葉は本当だった。
 真面目な蒼佑の教え方はわかりやすく、中の下くらいの葵の成績は、みるみるうちに上がっていき、気が付けば学年のトップ30に入るようになっていた。

 両親は喜んだし、祖父も喜んだ。
 そして葵も、当然のように、美しくて優しい蒼佑に、恋をしていたのだ。

 けれど自分のような子供が、彼の相手にはとてもふさわしくないと思った。

 引っ込み思案だった葵は、恋心を打ち明ける気もなく、淡い片思いは、ふわりと消えていくはずだった。

 だが、高校二年生になろうかというころ、祖父に『蒼佑くんは、お前の夫としてどうかね?』と言われて、葵の人生は変わった。

 結婚などまったく理解できない。想像もできない。けれど、彼の側にいられる。

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